第14回
箸川柳大賞発表

第14回を迎えました箸川柳、今回は4,116句の投稿がございました。
今回も多数の皆様よりご応募いただき、ありがとうございました。

兵左衛門社内での厳正なる審査の結果、大賞以下各賞が決定いたしましたのでここに発表いたします。

第14回箸川柳大賞
子のしつけ 孫の箸見て 安堵する
福井県「ペンネーム/向日葵」さん(52歳)

講評/箸という日本の文化の一面を象徴する存在を通して、古くから継承されてきた日本の心、自負が見えてくる。箸の持ち方やちょっとした仕草だけで、自らが受け継ぎ子に託した「しつけ」が、また次の世代へ受け継がれる安堵と悦び。核家族化の社会での外孫の様子とすれば、さらにその思いは作者にとって強いのではなかろうか。箸を通しての文化が一句となった。

大賞賞品/箸職人が作るオリジナル(大賞川柳入)の携帯箸「八四郎(はしろう)」セット
優秀賞
箸と靴 そっと揃える 君が好き
広島県「ペンネーム/トロロ」さん(33歳)

講評/和の嗜みはうつくしい。何気ないしぐさの中の日本のココロを描いた一句。作者は、若い女性。ふと見た殿方への視線だろうか。僅か十七音で、対象への思いや心の動きが見えてくる。

優秀賞賞品/箸職人が作る優秀賞川柳入り箸セット
優秀賞
首相でも 使いこなせぬ 妻と箸
神奈川県「ペンネーム/メルシー僕」さん(32歳)

講評/ある意味で時事川柳だろう。「モリトモ」以降、急に注目を浴びた昭恵夫人。ついでに、総理の箸の上げ下ろしまで指摘されてしまったのは、首相という公の立場であり、庶民の目は川柳を通しても厳しい…。

優秀賞賞品/箸職人が作る優秀賞川柳入り箸セット
優秀賞
ふれてみて はじめてわかる 箸と人
宮城県「ペンネーム/たまこっち」さん(38歳)

講評/人も箸も日常に流されている状態では、空気のような存在でもあるが、ひとたび意識すると、その深みをはじめて識る契機にもなる。「ふれてみて」という上五が、箸や人を通して五感と意識を結び付ける。

優秀賞賞品/箸職人が作る優秀賞川柳入り箸セット
特別審査員 近藤珠實 賞
子が巣立ち 無口な箸が 残される 大阪府 平井さん(69歳)
評価/毎日、食事をしながら交わした家族の楽しい会話!巣立って行った子どもの箸は、何も言わないけれど、見るたびその子の想い出が・・・。「箸」がいかに使っていた人の一部になっているかを強く思わせられます。
近藤珠實(こんどうたまみ)氏
『清紫会』新・作法学院学院長。
作法をより現代社会にマッチしたものとするため、新作法「清紫会」を結成。
新・作法学院で生徒指導の傍ら、テレビ、講演、執筆、社員教育などで活躍中。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸+近藤氏の著書

特別審査員 三田村有純 賞
箸持てば なんか落ち着く 日本人 福岡県「ペンネーム/かやかや」さん(14歳)
評価/私も仕事柄、世界中を旅行する機会も多く、また、長期に亘って転々といろいろな国を渡り歩くこともあります。そんな道中、食事の場でお箸を出されると心が落ち着き、ホッと気持ちも和らぎ、日本人であることを改めて感じる瞬間でもあります。今後世界で活躍する場が広がっている方の素晴らしい句であります。
三田村有純(みたむらありすみ)氏
東京藝術大学美術学部 参与 名誉教授。
日展評議員・日本現代工芸美術家協会評議員。
日本漆文化研究所副理事長。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸+著書

特別審査員 尾藤一泉 賞
箸と筆 持つと背筋が ピンとする 東京都「ペンネーム/ごまさん」さん(11歳)
評価/「箸」は食文化、「筆」は、日常から芸術まで使われた日本伝統の道具。11歳の少年が、すでに伝統を解し、箸や筆との接点において日本人としての自負が背筋に形として現れる。日本、捨てたもんじゃない。
尾藤一泉(びとういっせん)氏
川柳家。 川柳「さくらぎ」主宰。川柳学会専務理事。
女子美術大学、武蔵野美術大学非常勤講師。Web川柳博物館。
著書に『川柳総合大辞典』、『親ひとり子ひとり』、『門前の道』ほか。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸

特別審査員 兵左衛門会長 賞
親に似て 孫もやばいぞ 箸使い 兵庫県「ペンネーム/壮年隊」さん(61歳)
評価/20年にわたり、お箸の持ち方、使い方を教える教室を開催してまいりました。その時に遭遇する場面を思い起こさせる、まさに一句であります。大人がしっかりと新しい世代に伝えていくこと、それこそが今の日本に必要なのではないかと感じる句でもあります。
兵左衛門会長

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸

入選※順不同
  • まだ活ける 使い古しの 箸・亭主 埼玉県「ペンネーム/湯たんぽ」さん(73歳)
  • お食い初め 今日から箸の国の人 三重県「ペンネーム/海風」さん(58歳)
  • 青い目の YOUのふり見て 直す箸 東京都「ペンネーム/風信子」さん(57歳)
  • 箸使い 画竜点睛 欠く美人 東京都「ペンネーム/カジ」さん(69歳)
  • おばんざい お箸で取り分け 和食の美 東京都「ペンネーム/もも子」さん(43歳)
  • レポーター 何とかしろの 箸使い 愛知県「ペンネーム/フ―マー」さん(62歳)
  • ネイルより オレの目を引く 箸使い 京都府「ペンネーム/ごんぞう」さん(52歳)
  • 折鶴を 添え一膳の 祝い箸 滋賀県 井田さん(70歳)
  • 上カルビ 忖度の無い 孫の箸 愛知県「ペンネーム/さごじょう」さん(34歳)
  • 孫の名に フリガナの要る 祝い箸 愛知県「ペンネーム/かきくけ子」さん(66歳)
  • マイ箸と 五輪・リニアの 夢の旅 東京都「ペンネーム/都井 岬」さん(70歳)
  • 初孫に 箸ファーストで 初躾 東京都「ペンネーム/犀川 一郎」さん(54歳)

入選賞品/兵左衛門の人気のお箸を差し上げます。

佳作※順不同
  • おもてなし 箸ひとつにも 日本の美 滋賀県「ペンネーム/一二三茶」さん(56歳)
  • 神ってる とてもきれいな 箸使い 大阪府「ペンネーム/ぴちまつ」さん(47歳)
  • 箸作法 履歴書よりも 雄弁に 千葉県 安田さん(60歳)
  • おふくろの しつけレシピに 箸使い 神奈川県「ペンネーム/はますだれ」さん(55歳)
  • 箸に書く キラキラネーム 保育園 千葉県「ペンネーム/五郎」さん(67歳)
  • 色白も 隠しきれない 箸の癖 兵庫県「ペンネーム/鯖ナン」さん(42歳)
  • 子が生まれ 見直す家計 箸使い 大阪府「ペンネーム/逆ペリカン」さん(34歳)
  • お泊りに マイ箸持参で 孫が来る 長崎県「ペンネーム/晴グランマ」さん(57歳)
  • 美しい 国に繋げる 箸文化 愛知県「ペンネーム/まやりーな」さん(14歳)
  • いい国に 生まれたと知る 夫婦箸 神奈川県「ペンネーム/笑司」さん(71歳)
  • 子育ての 醍醐味知った 箸使い 埼玉県「ペンネーム/あまた」さん(53歳)
  • 愛国は 勅語読むより 箸使い 東京都「ペンネーム/野上等々力」さん(66歳)
  • 妻も娘も 箸まで赤い カープ女子 千葉県「ペンネーム/極楽鳥」さん(57歳)
  • 幸せと 大豆上手に 拾う箸 愛知県「ペンネーム/もよ」さん(55歳)
  • 一安心 愛ちゃん嫁ぐ 箸の国 東京都「ペンネーム/よしぼう」さん(76歳)
総評
「箸川柳」も14回目を迎えるが、箸という存在は、日本人にとって身近なものだけに、作者にとっての見つけどころが多々あり、入選作では、比較的面白い視点が毎回みられるのがいい。また、如何にも川柳らしい人情の機微を描いた作品も多く、単なる言葉の可笑しさだけに頼らない面白さがある。反面、寄せられる作品には、類想も増えてきている。過去にあったような作品は、出来るだけ避けて「箸と今」や「箸と自分」を新しいく捉えた作品が求められる。次の節目の15回には、さらに箸を通した「今」が描かれる作品が増えることを楽しみにしている。 特別審査員/川柳家 尾藤一泉

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