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基本の材料【漆】
漆の語源
大和言葉の「ウル」と「シ」の
二語の組み合わせ
大和言葉の「ウル」=濡れている、みずみずしい、光沢のあるなどの意 大和言葉の「シ」=物をつなぎ止める、固定する、固着する、静止するなどの意 この二つの言葉をつなげたとする説
(三田村有純氏による説/東京藝術大学美術学部教授/ 日展評議員・日本現代工芸美術家協会評議員/日本漆文化研究所副理事長)
大和言葉とは
日本古来の固有の言葉。 漢語や外来語以外の、特に漢語に対して「和語」ともいう。 漢語が「音」であるのに対し、大和言葉は「訓」。 例)て、みみ、ひとつ、ふたつ、みる 中国から漢語が入ってくる以前から日本人が持っていたしゃべり言葉で、 短く母音に分けたそれぞれに意味があると考えられています。
他にも様々な説があります。
◎麗し=ウルハシが転訛したとする説
塗り肌が艶やかで、しっとりとした味わいを持っているため、その美しさを表す言葉として「麗し」といい、ウルハシからハがぬけたとする説。
◎ウルハシからウルシとハシに別れたとする説
秋になると山の中で一番早く紅葉するのが漆属植物である。その代表となるものが漆の木とハゼの木。麗しく紅葉するのでウルハシの四文字を別けてウルシ(ハを中略)とハシ(ウルを上略)とした。そのハシがハゼに転訛したという説。
◎潤汁=ウルシルが転訛したとする説
◎潤いのある=光沢のある汁(液)という表現であり、漆液のことを表しているという説。
漆の「乾燥」は、世間一般でいう「乾かす」という行為では決して乾かない性質を持ちます。漆の乾燥(硬化)には、水分つまり湿気が必要です。 漆の乾燥の最適条件は ・温度20~30℃ ・湿度70~80% これらの湿度を補うため、漆職人たちは湿気がこもる押入れ状の「うるし風呂(室)」と呼ばれるものを設けて、温度と湿度を計算しながら一定の色艶へ仕上げていきます。このことから、漆の乾燥を職人用語で「蒸らす」とか「しめす(湿す)」と言います。木から採れる「漆」という漢字が、木ヘンではなく、水を象徴する「さんずいへん」なのは、これらの性質に基づいているからとも言えます。
◎塗汁=ヌルシルが転訛したとする説
◎潤し=ウルホシがうるしになったとする説
潤しという、みずみずしく、潤沢で、艶のあるさまを言い表した言葉が元になり、物に塗って美しく潤沢にすることをウルシと言い表すようになったという説。
◎潤師(ウルシ)からきているという説
土師(はにし)や鍛師(かたし)などのように、潤師(うるし)は、光沢を出す仕事をする人の総称であり、それが 後で材料そのものを表すようになったという説。
◎インドのウラシから来たとする説
インドのバンジャップ州では、漆属のことをウラシといい、日本に移入されてウルシに 転訛したとする説。
◎ウシツから転訛したのではないかとする説
五世紀の前後に日本に漢字が伝来した。その中に漆という漢字もあり、その漢字を シチ・シツと呼ぶ中国読みに、接頭語のウがついてウシツとなり、ウシツが漆に転訛 したという説。
漆の用途
塗膜
漆の塗膜にはコーティング剤として
化学的にも素晴らしい性質があります。
塩酸・硫酸などの酸類に侵されない
アルカリにも侵されない
金や白金などを溶かすときに使用される王水にも侵されない
防水性がある
防腐性がある
防虫性がある
抗菌性がある(「サルモネラ」「腸炎ビブリオ」「大腸菌」などに高い抗菌性を発揮)
保温性に優れ、熱の伝導性が低いために、手には程よい温かさが残る。 (伝導性の高い順は、磁器・・陶器・・漆器)
さび止め。鉄瓶などでは漆を塗った後、表面を焼いてさび止めとする。
接着剤
漆は接着剤としても使われてきました。
法隆寺の国宝「玉虫厨子絵」は、日本最古の漆絵(漆を塗って、乾かないうちに金ぱくなどを接着する) …… 飛鳥時代
神を祭るための乾漆像(粘土で形を作り、その外側に麻布を漆で接着して中の粘土を水で溶かし、外側は漆によって形を形成する) …… 奈良時代
金閣寺の内装の金ぱくは、漆によって接着された。 …… 室町時代
現代にも通じる「布張り」「布着せ」とは、布を漆で接着することにより強度を増す技法