第12回
箸川柳大賞

第12回箸川柳大賞
お箸はね 日本文化の ありのまま
広島県 岡田さん(13歳)

講評/シンプルながら人気映画「アナと雪の女王」から流行語を利用する公募川柳的テクニックを使い、「箸は」という問に対し「日本文化のありのまま」という答えとした作品は、江戸川柳の基本である「一章に問答」という伝統の構成にもかなっていることが、選考委員会の推薦となったものです。若き才能の受賞を嬉しく思います。

大賞賞品/箸職人が作るオリジナル(大賞川柳入)の携帯箸「八四郎(はしろう)」セット
優秀賞
北陸へ 新幹線が 伸ばす箸
愛知県「ペンネーム/さごじょう」さん(32歳)

講評/今北陸が熱い・・・ということを感じますが、新幹線効果は絶大のようです。擬人法による「新幹線が伸ばす」というフレーズが、単なる意味や報告の世界を脱し、表現者としての巧みさを垣間見せてくれます。北陸の味に向かう人々の心が、箸を通して見事に映像化された作品です。

優秀賞賞品/箸職人が作る優秀賞川柳入り箸セット
優秀賞
リハビリの 涙知ってる 豆と箸
広島県「ペンネーム/カラスの行水」さん(71歳)

講評/リハビリに豆を箸でつまむという状況報告の作品は無数に届いていますが、「豆と箸」が「涙を知っている」という心理まで描いた作品は、ほかにありませんでした。もちろん「豆と箸」が「知っている」というのは見立てで、その涙こそ「作者」や「周囲の家族」といったニンゲンそのものの思いなのです。

優秀賞賞品/箸職人が作る優秀賞川柳入り箸セット
優秀賞
美しく 持ちたい箸と 和の心
大阪府「ペンネーム/ぜんだきこ」さん(39歳)

講評/やや淡泊、同想もある表現ですが、審査員の心をひいたのが「和食」の「世界遺産登録」という快挙を踏まえての「箸と和の心」というフレーズだったのでしょう。箸メーカー主催の公募川柳ならではの「主催者の思い」に叶った作品でしょう。川柳もまた「和の心」です。若い作者に期待です。

優秀賞賞品/箸職人が作る優秀賞川柳入り箸セット
特別審査員 近藤珠實 賞
ハゲてきた 夫の箸に 苦笑い 埼玉県「ペンネーム/星の砂」さん(43歳)
評価/何げなく見た夫の箸。長年使われてきたその状態が夫の姿(特に頭)と重なり、思わず苦笑してしまう妻。「ハゲ」というユーモラスな言葉から夫婦生活の年月とほのぼのとした愛を感じさせられます。
近藤珠實(こんどうたまみ)氏
『清紫会』新・作法学院学院長。
作法をより現代社会にマッチしたものとするため、新作法「清紫会」を結成。
新・作法学院で生徒指導の傍ら、テレビ、講演、執筆、社員教育などで活躍中。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸+近藤氏の著書

特別審査員 三田村有純 賞
お見合いで 魔法の杖になった箸 愛知県「ペンネーム/雪ん子」さん(23歳)
評価/はじめて出会う男女がお互いの箸さばきに惚れると言うのは大事な事です。新しい家庭が、お箸で創られるのは嬉しいかぎりです。
三田村有純(みたむらありすみ)氏
東京藝術大学美術学部教授。
日展評議員・日本現代工芸美術家協会評議員。
日本漆文化研究所副理事長。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸+著書

特別審査員 尾藤一泉 賞
箸文化 クールジャパンを つまみ上げ 徳島県 坂本さん(57歳)
評価/私と同世代の作者だったのですね。クールジャパンはいろいろとありますが、「和食」がクールジャパンなら、それをサポートする「箸文化」もクールジャパンを一役買っています。兵左衛門さんの企業ポリシーもまた、日本文化を担うものです。2020年に向け世界に開いた日本の今を摘み上げた見事な作品です。
尾藤一泉(びとういっせん)氏
川柳家。 川柳「さくらぎ」主宰。川柳学会専務理事。
女子美術大学、武蔵野美術大学非常勤講師。Web川柳博物館。
著書に『川柳総合大辞典』、『親ひとり子ひとり』、『門前の道』ほか。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸

特別審査員 兵左衛門会長 賞
TPP 箸とフォークが かみ合わず 岐阜県「ペンネーム/かきくけ子」さん(64歳)
評価/それぞれの国々が持つ何千年と続く文化の違いが経済交渉の障害になっているのでしょう。お互いの食の違いを理解し、尊重し合うことで、今後合意へ向けての展開に重要な鍵を握っているのかもしれません。
兵左衛門会長

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸

入選※順不同
  • 退院し 急に元気な 箸づかい 東京都「ペンネーム/稲岡俊一」さん(70歳)
  • クレームが 入る女優の 箸使い 熊本県「ペンネーム/チデンシンヤ」さん(33歳)
  • 化けてても ヨーデルヨーデル 箸の癖 東京都「ペンネーム/風信子」さん(55歳)
  • 日本食文化遺産と 箸文化 兵庫県「ペンネーム/尼の政爺」さん(69歳)
  • 壁ドンの 恋もドン引き 握り箸 東京都「ペンネーム/うさぎ柄の箸」さん(49歳)
  • 初孫に 寄ってたかって お食い初め 大阪府 堂上さん(71歳)
  • 食事して 七難隠す 箸使い 神奈川県「ペンネーム/十六夜」さん(56歳)
  • およばれに あなたが目立つ 箸使い 三重県 上田さん(84歳)
  • マイ箸が しっくりなじむ いい笑顔 福井県 大和田さん(66歳)
  • そのお箸 ご飯と一緒に 笑ってる 東京都 岩﨑さん(14歳)
  • 箸をもち いきなりなんか おなかへる 東京都 荒木(12歳)

入選賞品/兵左衛門の人気のお箸を差し上げます。

佳作※順不同
  • 箸を持つ 君に捕まる おれと豆 宮城県「ペンネーム/大立慈雨」さん(53歳)
  • 五輪待つ ニホンの箸と おもてなし 埼玉県「ペンネーム/ふうたん」さん(64歳)
  • いつの日か 世界遺産に 箸文化 北海道「ペンネーム/柳月」さん(50歳)
  • 箸使い 知らず知らずに ボケ防止 神奈川県「ペンネーム/あっくん」さん(35歳)
  • 五輪では OHASHI二本の おもてなし 岐阜県「ペンネーム/よっさん」さん(62歳)
  • ばぁちゃんの 箸はじぃちゃん 名前入り 福岡県「ペンネーム/三日坊主」さん(64歳)
  • 里にまだ 自分の箸がある安堵 神奈川県「ペンネーム/ぱんまろ」さん(29歳)
  • 妻の箸 しゃべりながらも よく動く 兵庫県「ペンネーム/てんじょう」さん(75歳)
  • 骨だけが 惚れ惚れ残る 箸上手 神奈川県「ペンネーム/半熟女」さん(61歳)
  • 箸使い 豆と魚に 試される 東京都「ペンネーム/いーじー」さん(77歳)
  • 「そりゃ違う」 箸でテレビに 物申す 兵庫県 松下さん(53歳)
  • 少子化に 小さな箸が 増える幸 神奈川県「ペンネーム/ひなこ」さん(63歳)
  • レジェンドが ここにあったか 箸文化 奈良県 渡邉さん(80歳)
総評
「箸川柳」も12回。ひとつの箸をテーマにしながらも、時代を捉えた作品が増え、技術的にも向上しているのを感じます。優秀賞の「北陸へ」「リハビリの」2作品がそれに当たるでしょう。選考委員会が選んだ13歳のジュニア作品は、やや幼い口調ながらも、流行語の中に「箸」という存在をしっかりと捉えています。若き才能に期待が大きくなります。その他の受賞句も、それぞれに作者の思い、社会を見つめる目が利いていて、ニンゲンを直接描く川柳の面白さが伝わってきます。 特別審査員/川柳家 尾藤一泉

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