第8回箸川柳募集

兵左衛門

2010年9月30日に締め切らせていただいた「第7回箸川柳」に、4,663句のご応募をいただきました。 兵左衛門社内での厳正なる審査の結果、大賞ほか、各賞が決定いたしましたので発表させていただきます。

評価/ちょっとした日常の勘違いを捉えた面白さ。日頃、アタマの状態が気になるご主人にとっては、耳障りの一語。そのコトバの裏には「こんなになるまでアリガトウ」といった気持が背景にあり、夫婦間の溝は感じられないほのぼのとした温かさがある。

富山県なるほど28号様、おめでとうございます!

大賞賞品/箸職人が作るオリジナル(大賞川柳入)の携帯箸「八四郎(はしろう)」セット

評価/財産や目に見えるモノとしての「形見」も大切ですが、日本人のこころ、故郷のこころを継承する「箸の使いかた」のような見えない文化も大切なもの。亡き祖母を思うお孫さんのあたたかな心が伝わります。

優秀賞賞品/箸職人が作る優秀賞川柳入り箸セット

評価/「鯛や平目の舞踊り…♪」は、懐かしい童謡ですが、それを下敷きに、見事に魚を食べ尽くす箸さばきを描きます。擬人化した鯛や平目が「丸裸」という姿は、ちょっと卑猥な要素もあるようですが、コトバのユーモアとして笑いを誘います。

優秀賞賞品/箸職人が作る優秀賞川柳入り箸セット

評価/8月4日の「箸供養」は、世話になった器物に対する日本人独特の感謝の心と、箸という文化を通じてニンゲンを考える一日として定着しています。作者の素直な感覚が十七音から見えてきます。

優秀賞賞品/箸職人が作る優秀賞川柳入り箸セット



評価/箸にまで言うダイエットの決意が強いことを表すと同時に、つい食べてしまう行動の責任を箸におしつけてしまいたくなる。そんな身勝手な姿が見えて可笑しい!

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸+近藤氏の著書

近藤珠實(こんどうたまみ)氏

『清紫会』新・作法学院学院長。

作法をより現代社会にマッチしたものとするため、新作法「清紫会」を結成。新・作法学院で生徒指導の傍ら、テレビ、講演、執筆、社員教育などで活躍中。

評価/日本では、弥生時代から使われた痕跡のある箸。歴史時代には、すっかり食の文化に定着。たった二本の棒で挟む、切る、分ける、運ぶ…と、はば広い機能を持たせます。時事であるハヤブサの快挙と日本の箸文化をコントラストした作者の<目>が利いています。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸+尾藤氏の著書



尾藤一泉(びとういっせん)氏

川柳家。

川柳「さくらぎ」主宰。川柳学会専務理事。女子美術大学、武蔵野美術大学非常勤講師。Web川柳博物館。著書に『川柳総合大辞典』、『親ひとり子ひとり』、『門前の道』ほか。

評価/人生を古希の妻と明るく元気で過ごすことができる夫は幸せです。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸+三田村氏の著書



三田村有純(みたむらありすみ)氏

東京藝術大学美術学部教授。

日展評議員・日本現代工芸美術家協会評議員。日本漆文化研究所副理事長。

評価/日本の食と日本のお箸は日本食文化の最たる文化の証です。箸食を通して世界平和に向けた交流を望むところから、その拡がりに最も相応しいものと考えます。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸

賞品/入選された方の名前を入れたお箸

※順不同

作品 お住まい
/お名前orペンネーム(年齢)
リハビリを 箸が応援してくれる 鳥取県/浜ぶどうさん(53)
ボケ防止 箸で豆追う 爺と婆 神奈川県/清澤さん(80)
カバンから 箸とケータイ 出る時代 京都府/角山さん(31)
嫁ぎ先 文化の違い 箸で知る 兵庫県/はるまんまさん(39)
デジタルの 世も揺るぎなき 箸文化 京都府/老手駆さん(64)
箸持てば 笑顔ふくらむ 子だくさん 広島県/蒲田さん(80)
箸使い 下手な役者の 演技力 東京都/双雀さん(76)
お見合いに 箸の試練の 焼き魚 岐阜県/かきくけ子さん(59)

※順不同

作品 お住まい/お名前orペンネーム(年齢)
MY箸で 食べてみたいな 宇宙食 兵庫県/夢輝 葵さん(41)
台所 最後に残る 夫婦箸 山口県/ぽんちゃんさん(51)
ガングロの ひと際冴えた 箸さばき 兵庫県/みどりさん(67)
「ケータイ」と 言って取り出す マイお箸 大阪府/アンチフォークさん(57)
箸と気を 使いこなして 社会人 愛知県/さごじょうさん(27)
箸の寿命 総理五人と ほぼ同じ 静岡県/青空さん(46)
つかえない 上司露見の 箸遣い 東京都/明け鳥さん(54)
婚活が うまく決まった 箸づかい 東京都/たれこあらさん(43)
マイお箸 これが私の エコデビュー 沖縄県/中村さん(45)
アーンして 介護も楽し 夫婦箸 奈良県/渡辺さん(76)
お受験で 練習してる 箸使い 千葉県/嵐山さん(49)
箸止める ニュースばかりが 増える国 神奈川県/あべちゃんさん(50)
初孫の 祝いに箸と ランドセル 千葉県/浜ちゃんさん(44)
総評

川柳は、人間社会や人間の為すことを直接に読む文芸です。 「箸川柳」は、「箸」という日本人にとって身近な文化を通じてニンゲンを見詰めるいい機会です。 「大賞」「優秀賞」は、社内の選考委員の圧倒的多数の推選により受賞したもので、判りやすく面白い作品が上位になりました。 これらの他「生きるため少し長目の箸にする」「マニュキアに合う箸探す 春うらら」「失恋と同じ数だけ箸を持つ」といったニンゲンの心理を描いた句も送られてきましたが、 残念ながら今回は票が足りなかったようです。
川柳という短いフレーズの端的な表現は、ただ面白いだけではなく、箸を通じて感じられる作者の「こころ」が盛込まれると、さらに深い句となるでしょう。 すでに7回目を迎えた「箸川柳」は、ある意味しっかりと定着した存在になっています。「箸川柳」が、さらなるニンゲンを見詰める契機として、 言語文化の一つに育つことを願っています。

特別審査員/尾藤一泉